アーシング


回路設計において、特にアナログ回路ではグランド(GND)というものは重要である。これはバイクでも同じで電気で動いているものはとにかくグランド(バイクではアース)が重要なのである。「えっ?バイクってガソリンで動くんじゃ?」。あほいっちゃいかん、スパークしなきゃ走らんちゅうねん。電気というのは電子(マイナス)が活動することで動いている。つまり電流というのは見かけ上、プラスから流れているように思えるが、実際は電子がマイナスからプラスへ動いているのである。このマイナスという電位がグランドになるのである。グランドはその電気的なレベルが安定であればあるほど・・・

ともかく、電気で動作するものはグランドを強化することで安定になる。グランドが安定になれば、安定したスパークが発生する。

また電圧が高いほど、さらに電流が大きいほど、導体の表面を電気が流れる。表面に処理がされていたり酸化していたりすると極端に電流の流れが妨げられる。フレームを導体とするよりも銅線を使用する方が実質の導抵抗を下げられるはずである。

現在のXR250Sは、非常にスパークが弱い。バッテリレスにしたことも一因にあるとは思うが、しばらく乗っていない時期があってスパークが弱くなっているようである。スパークが弱いために、中低速で息尽きのような症状をおこしていて、なんかパワーがないのである。

そこでアーシングを試みた。ここで注意しなければならんのは、鉄というのは意外と電気を通しにくいということなのだ。電気の通しやすさというのは、抵抗値R(Ω)であらわされるが、これは以下の関係を持つ。

R=ρ×L/S ρ:導電率,L:導体長さ,S:導体断面積

導電率が一定の場合、短く太いものが電気を通しやすい。導電率は物質により異なりだーいたい以下のようになっている。表はあくまで目安で純粋な元素の場合で通常は不純物が混じっているのでちょっと異なる。

金属
導電率(1e-8Ωm)
銅(Cu)
1.7
銀(Ag)
1.6
鉄(Fe)
10
金(Au)
2.4
マグネシウム(Mg)
4.5
アルミ(Al)
2.5

鉄は銅に比べて、約6倍抵抗が大きい、つまり電気を通しにくい。バイクの場合、フレームにアースしてあるのが普通だが、フレームはたいてい鉄で表面にコーティングが施してある。逆にアルミフレームの最新バイクではフレームアースも十分な効果を得ることができるということである。

XRの場合、フレームは鉄で、しかもイグニッションからのスパークはフレーム〜シリンダヘッドの接続となっている。これをイグニッションコイルから直接、銅線でアースすることで抵抗を下げることができそうである。銅線は一般に手に入りやすい、3.5スケ(Sq=平方mmのこと)のより線を用いた。本当は5.5スケ程度がいいのだろうが、その店にはなかった。フレームへの接続には電気工事用の圧着端子M6を使用する。こだわるなら、圧着端子も銅板を使用したい。ここでは銅材の亜鉛メッキ品を使用する。

一方をシリンダヘッドカバーのねじに共締する。端子が接触する部分はヘッドもねじもやすりがけを行い、表面を電気が通りやすくしておく。

もう一方はイグニッションコイルのGND側でとも締とする。写真では3本のアース線を移している。残りの2本は、ジェネレータカバーへの接続とバッテリー(今回はコンデンサ)のマイナス端子への接続である。

ジェネレータカバー側への接続である。ねじでとも締する。

3.5スケで7本より銅線ともなるとコシが強くある程度適当にラッピングするだけでも暴れない。

なお、バッテリーマイナス端子〜クランクケース(セルモータマイナス側)はアーシングが標準である。ここは始動時に大電流が流れることからその処理がなされている。その線は錫メッキ線であるが極太である。5.5スケいやそれ以上である。やはり5.5スケ以上の電線を探してきたほうがよさそうだ。


で、効果は?

効果あり!

中低速での尽きが全然違う。とても良くなっていると感じられる。若干アイドリングもあがっているようである。これで、だいぶ理想に近付いてきた。もうすこしいじっていこう。

5.5スケの銅線をなんとか手に入れてアース線をもっと増やしておこう。

このXRは奥様のもので、これで林道に行くことはまずない。多少、線が出ていても困ることはないのである。

つづき)明朝、もういちど乗ってみた。今度は少し遠くにいったが、昨日感じたより効果が少なかった。がしかし確実に効果があることはわかったのでもう少し電線を太くするか取り回しをかえてみたい。

たぶんバッテリレスにしている関係で容量も少ないのが原因であろう。また、すべて感覚でやっているので、もう少し数値化し定量的に判断することが望ましいといえる。

おわり

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